ビリー・ビーンのマネーボールが評価する出塁率・長打率、評価しない犠打・盗塁・打点・得点圏打率

ビリー・ビーンがオークランド・アスレチックスで展開しているマネーボールは、統計学的データにもとづく選手の獲得と管理。

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統計学を用いるということは、成功するパターンを科学するということである。

もうひとつの意味は、その道の専門家が常識とうたっていることがらが、じつはまったく間違っている可能性がある。
よって、歴史と伝統のある常識を墨守して失敗する確率を、下げるということでもある。

ビリー・ビーンのマネーボールの意味

「マネーボール」という言葉からは、
日本の、ジャイアンツ、ソフトバンク、そしてタイガースのように、潤沢な資金で優秀な選手を獲得し
優勝をお金で買う球団経営、と勘違いするかもしれない。

金満ベースボールということではなく、逆だ。
いかにお金をかけずに年俸以上の働きをする選手を獲得するか、
最少のマネーで、最高のベースボールを。という意味である。

極端に言えば、1勝するためにかかるコストを最小限にするということである。

ちなみに、マネーボールの実体であるセイバーメトリクスは、ビリー・ビーンのオークランド・アスレチックスだけでなく、つねにワールド・シリーズ、世界一を狙って補強に大金をつぎ込んでいる、ニューヨークヤンキースやボストン・レッドソックスも採用している。

日本プロ野球球団とマネーボール

日本でいえば、マネーボールそのものを実践しているのは、日本ハムファイターズだろう。
次は、広島カープだろうか?

ファイターズは明確に統計学的データで選手を獲得し管理して、また高年俸になると遠慮なく放出している。
これはオークランド・アスレチックスとまったく同じ球団経営方針である。
まさしく、マネーボール!

カープは結果としてのマネーボールのような気がする。
ただし選手の発掘と育成力はすばらしい。

阪神タイガースが、もっとも費用対効果のない金満補強を繰り返している。
外国人4人がタイトルを取って、リーグ優勝できなかった。CSだけは勝ち上がったが、日本一は逃している。
勝負弱さ、勝たなければならないゲームを落とす、負けられないゲームはやはり負ける。

補強した西岡、福留、ゴメス、マートン、メッセンジャーやオ・スンファンによって、シーズン後半とCSはなんと踏ん張ったが、その補強選手のバッターが打てずピッチャーが打たれて日本シリーズは惨敗した。
替わりに活躍できる、とくに生え抜きが皆無というのが象徴的だろう。

マネーボールによる選手や1勝のコストパフォーマンス

ところで、マネーボールは球団経営のコストパフォーマンスを最高にするものであり、
ひとつは、選手の年俸を適切なコストにおさえることである。
もうひとつは、パフォーマンスのほう、伝統的野球観から逸脱した選手評価のシステムをつくることである。

後者のシステムのほうは、セイバーメトリクスと言われているが、
問題は、後付けでの選手の活躍を評価するだけでなく、選手の今からの活躍を予測すること、チームが勝利する確率を計算すること、膨大なデータを集積し分析して、極端に言えば「勝利するアルゴリズム」をつくり上げていることである。

このマネーボールでビリー・ビーンは、ドラフトによる新人選手獲得や、他球団とのトレードでもパフォーマンスを最大限にしようとしているのである。
また、高年俸の選手は放出、それによる資金獲得や1位指名権を譲渡してもらうことによって、より低年俸の選手を獲得して勝てるチーム作りをしている。

ちなみに、オークランド・アスレチックスは、2000年から地区優勝5回、ワイルドカード2回という実績をあげている。

マネーボールのアルゴリズム

まず、ビリー・ビーンは、野球を「27個のアウトを取られるまでは終わらない競技」と定義している。
つまり、打者と投手のアウトの取り合いゲーム、なのである。

マネーボールは、統計データの回帰分析から「得点期待値」というものを設定しているが、
打者で最高に評価されるのは「出塁率」である。

打者はアウトにならないこと。
アウトにならない確率が高い選手が評価され、ヒットだけでなくフォアボールを選ぶことが重要視される。
この出塁率に長打率を加えたOPSを、ビリー・ビーンはもっとも評価している。

なお、打点や得点圏打率は、ランナーがいるかいないか運次第なので、重要視しないらしい。

よって、むざむざ1アウトを提供する送りバントや、アウトになる確率も高い盗塁などは、評価されない。
ということは、そのような采配はしないということだ。

投手では、アウトを取れないフォアボールを与えないこと、三振でアウトが取れること、ホームランや長打を打たれないことで、相手の得点期待値を下げることになる。
被安打や防御率などは、運に左右されることも多いので、指標としては重要視しないらしい。

ホームランや長打を打たれないことは、そもそも外野に打たれないことであり、できるだけ内野ゴロを打たせることである。

伝統的野球人が敵に回る統計学的野球

結局、プロ野球をよく知っている専門家は、出塁率が高評価であったり、バントや盗塁を否定したり、防御率はどうでもいい、などと常識を破壊されて怒り狂ったわけだ。

ただ、膨大な過去のデータを分析し、特別なアルゴリズムで組み立てた統計学的野球は、選手の活躍やチームの勝ち負けを高確率で予測できるという事実に打ちのめされるのだが、守旧派は無視し続ける。

また、体育会系の野球人が、畑違いの理系の理論を拒むというだけではない。

好奇心旺盛な読書家なら、すぐに思いつくはずだが、科学の歴史もまた、長年の常識がくつがえされる歴史でもあることと同じである。

常識の最大の汚点は、常識に反する決定的な事実が目の前にあっても、例外として無視することである。
常識を否定する新しい理論のほうが整合性があっても、批判し拒否し、場合によっては抹殺するのである。

統計学的野球は、数十年もの間、無視され、批判され拒否された。

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